テレキャスターにハムバッカーを載せると、「テレキャスターらしい音ではなくなる」「邪道ではないか」と気になる人もいるでしょう。
結論からいえば、ハムバッカー搭載テレキャスターは邪道ではありません。フェンダー自身が1970年代から製品化しており、現在も複数のモデルが販売されています。
ただし、載せる位置によって音の変化は大きく異なります。
- テレキャスターらしいリアの音を残す:フロントハム+リアシングル
- 歪ませたリアの音を太くする:フロントシングル+リアハム
- ハムバッカー中心で使う:2ハム
- 明るい音と歯切れを優先する:通常の2シングル
大切なのは、邪道かどうかではなく、どの音を残して、どの音を変えたいかです。
テレキャスターにハムバッカーは邪道ではない
テレキャスターの基本形は2シングルですが、ハムバッカー仕様も長い歴史を持っています。後付け改造だけの特殊な仕様ではありません。
フェンダー自身が1970年代から採用している
1960年代後半には、テレキャスターのフロントピックアップをハムバッカーへ交換する改造がプレイヤーの間で行われていました。
フェンダーもこの流れを取り入れ、1971年に2ハム仕様のTelecaster Thinline、1972年にフロントハム仕様のTelecaster Custom、1973年には2ハム仕様のTelecaster Deluxeを登場させています。
つまり、ハムバッカー搭載テレキャスターは50年以上続いているフェンダー公式のバリエーションです。
邪道と言われるのはリアの音が大きく変わるから
伝統的なテレキャスターの特徴として挙げられるのが、リアピックアップの鋭いアタックと明るい高域です。
リアピックアップと金属製ブリッジプレートを組み合わせた音を「テレキャスターらしさ」と考える人も多く、ここをハムバッカーへ交換すると印象が大きく変わります。
そのため、リアハムや2ハム仕様を邪道と感じる人がいるのでしょう。
反対に、フロントだけをハムバッカーへ変えた仕様なら、リアの歯切れを残しながら、フロントに太さを足せます。テレキャスターらしさを残したい場合は、比較的選びやすい組み合わせです。
ハムバッカーを載せる位置で音と用途が変わる
シングルコイルとハムバッカーでは、ノイズの出方や音の太さ、出力の傾向が異なります。配置ごとの違いを先に整理しておきましょう。
| ピックアップ構成 | 音の傾向 | テレキャスターらしさ | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|
| フロントハム+リアシングル | フロントは太く、リアは明るい | 残しやすい | クリーンからロックまで幅広く使う |
| フロントシングル+リアハム | リアの出力と中域が強くなる | やや薄くなる | 歪ませたリフやリードを重視する |
| 2ハム | 全体的に太く、ノイズが少ない | 音は大きく変わる | ハムバッカーを中心に使う |
| 2シングル | 明るく歯切れがよい | 最も残る | カッティングや軽快なコード弾き |
同じハムバッカーでも、出力や磁石、コイルの巻き数によって音は変わります。表はあくまで一般的な傾向として見てください。
フロントハムはリアのテレキャスターらしさを残しやすい
フロントをハムバッカーにすると、単音やコードに厚みと丸さを加えられます。
フロントでは甘めのクリーンや太いリード、リアではテレキャスターらしい鋭い音を使えるため、両方の個性を残しやすい構成です。
ただし、フロントハムとリアシングルで出力差が大きいと、ピックアップを切り替えた際に音量も変わります。ピックアップの高さ調整を含めたバランス取りが必要です。
リアハムは歪ませた音を太くしやすい
リアをハムバッカーへ交換すると、一般的には中域と出力が増し、歪ませたコードやリードを太くしやすくなります。
シングルコイルよりノイズを抑えやすいため、ゲインを高くした演奏とも相性のよい構成です。
その代わり、通常のテレキャスターにある鋭い高域や軽快なアタックは弱くなります。リアの音が好きでテレキャスターを選んだ人は、交換前に一度立ち止まったほうがよい部分です。
2ハムはテレキャスターの形でハムバッカー中心の音を使える
フロントとリアの両方をハムバッカーにすると、ピックアップ間の出力をそろえやすく、歪ませた演奏にも対応しやすくなります。
ただし、2ハムだからといってレスポールと同じ音になるわけではありません。
多くのテレキャスターは、648mmスケール、ボルトオンネック、弦をボディ裏から通す構造を採用しています。スケールや構造が違うため、レスポールよりも輪郭や張りを感じるモデルもあります。
「レスポールの音をテレキャスターの形で出す」というより、テレキャスターの弾き心地でハムバッカーを使う仕様と考えたほうが分かりやすいでしょう。
改造せずにハムバッカー搭載モデルを選べる
これからギターを買う場合は、完成品から選ぶほうが仕様の失敗を避けやすくなります。
| モデル | ピックアップ | コイルスプリット | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Player II Modified Telecaster SH | フロントハム+リアシングル | あり | リアのテレキャスターらしさを残しやすい |
| Player II Telecaster HH | 2ハム | なし | 歪ませた音とシンプルな操作を重視 |
Player II Modified Telecaster SH
Player II Modified Telecaster SHは、フロントにPlayer II Modified Humbucker、リアにPlayer II Noiseless Teleピックアップを搭載しています。
トーンノブのプッシュ/プル操作で、フロントハムバッカーのコイルスプリットも可能です。
- リアはテレキャスター用シングルコイル
- フロントはハムバッカーとコイルスプリットを切り替え可能
- 6サドルのテレキャスターブリッジ
- ロッキングチューナーとTUSQナットを採用
- デラックスギグバッグ付属
リアの歯切れを残しながら、フロントに太い音も欲しい人に合っています。
なお、コイルスプリットはハムバッカーの片側だけを使う機能です。通常のテレキャスター用シングルコイルと構造が同じになるわけではありませんが、1本で使える音の幅は広がります。
Player II Telecaster HH
Player II Telecaster HHは、フロントとリアにPlayer Series Alnico IIハムバッカーを搭載したモデルです。
3ウェイスイッチとマスターボリューム、マスタートーンというシンプルな操作系で、コイルスプリットは搭載されていません。
ブリッジも伝統的な金属プレート付きテレキャスターブリッジではなく、6サドルのハードテイルタイプです。
そのため、通常のテレキャスターを太くした音というより、テレキャスターの形とネックの感触を持った2ハムギターとして選ぶほうが合っています。
通常の2シングル仕様や、予算別の現行モデルも比べたい場合は、テレキャスターのおすすめモデルを価格帯別にまとめた記事も参考にしてください。
手持ちのテレキャスターを改造する前に確認したいこと
ピックアップ交換だけで済む場合もあれば、ボディやブリッジの加工が必要になる場合もあります。
先にピックアップを買わず、現在のギターへ取り付けられるかを確認することが重要です。
フルサイズハムではボディ加工が必要になることがある
フロントへフルサイズハムバッカーを載せる場合は、ピックガードの交換だけで済むギターもあります。
一方、ボディ内部にシングルコイル分の空間しかない場合は、ハムバッカーに合わせたザグリ加工が必要です。外からは判断できないため、ピックガードを外して内部を確認しなければなりません。
リアをフルサイズハムへ変更する場合は、さらに注意が必要です。
- ハムバッカーが入るボディ側の空間
- ハムバッカー対応のブリッジまたはエスカッション
- ネジ穴や弦間ピッチ
- ピックアップの配線方式
リアはピックアップ単体だけでは交換できない可能性があります。加工に慣れていない場合は、購入前にリペアショップへ相談したほうが安全です。
シングルサイズハムなら加工を減らせる場合がある
シングルサイズハムバッカーは、シングルコイルに近い外形の中へ2つのコイルを収めたピックアップです。
テレキャスターのリア用としては、Seymour DuncanのSTHR-1b Hot Rails Tele Bridgeなどがあります。フルサイズハムよりも、既存のブリッジやザグリを利用できる可能性が高い製品です。
ただし、すべてのテレキャスターへ無加工で載るとは限りません。ブリッジの形状、ネジ位置、ザグリの深さはギターによって異なります。
音もフルサイズハムと完全に同じではありません。リアの見た目を大きく変えず、出力とノイズ対策を強化したい人向けです。
ポットの抵抗値と出力差も確認する
一般的なシングルコイルギターでは250kΩ、ハムバッカーギターでは500kΩのポットがよく使われます。
500kΩは高域を残しやすく、250kΩは高域をやや抑える方向に働きます。そのため、ハムバッカーだけを追加すると、音が想定より暗く感じたり、反対に回路変更後のシングルコイルが鋭く感じたりすることがあります。
フロントハム+リアシングルのような混合構成では、単純にすべて500kΩへ変えればよいわけではありません。
- ピックアップメーカーの推奨値
- フロントとリアの音量差
- 高域の出方
- コンデンサーの値
- コイルスプリットに必要な配線
このあたりまで含めて回路を決めます。
(参考:Seymour Duncan公式・ポット抵抗値の解説)
工賃と保証まで含めると完成品のほうが安い場合もある
改造費用はピックアップ代だけではありません。
ポット、スイッチ、ピックガード、ブリッジ、配線材、取り付け工賃が加わり、ボディ加工まで必要になると費用はさらに増えます。
元の状態へ戻せない加工は、中古で手放すときの評価に影響する可能性もあります。メーカー保証についても、改造した部分は対象外になることがあるため確認が必要です。
現在のギターのネックや弾き心地が気に入っているなら改造する価値はあります。そうでなければ、最初からハムバッカーを搭載した完成品を買うほうが手間と失敗を減らせます。
ハムバッカー搭載テレキャスターが向いている人
どの構成にするか迷ったら、残したい音から決めると選びやすくなります。
| 残したい音・使い方 | 選びやすい構成 |
|---|---|
| リアの鋭い音とフロントの太い音を両立したい | フロントハム+リアシングル |
| リアで強く歪ませたい | フロントシングル+リアハム |
| フロントもリアもハムバッカー中心で使いたい | 2ハム |
| 明るいカッティングや軽快なコード弾きを優先したい | 通常の2シングル |
| 今のギターを大きく加工したくない | 対応するシングルサイズハムを検討 |
| 配線や加工で失敗したくない | ハムバッカー搭載の完成品 |
テレキャスターの見た目が好きでも、音まで伝統的な仕様へ合わせる必要はありません。
ただし、リアシングルの音が好きなら、そこをハムバッカーへ変えると後悔しやすくなります。一番よく使うピックアップを残すか変えるかを先に決めてください。
まとめ
テレキャスターにハムバッカーを搭載することは邪道ではありません。フェンダー自身も1970年代から、フロントハムや2ハムのモデルを製造してきました。
選ぶ基準は「テレキャスターと呼べるか」ではなく、どの音が必要かです。
リアの歯切れを残したいならフロントハム、歪ませたリアを太くしたいならリアハム、ハムバッカー中心で使うなら2ハムが候補になります。
手持ちのギターを改造する場合は、ピックアップを買う前にザグリ、ブリッジ、ポット、配線、工賃まで確認しましょう。判断が難しければ、加工せずに使える完成品から選ぶほうが無難です。